「縫製ってどんなにハイテクになっても結局、手仕事なんですよね」と、打ち合わせの中でふと社長の但馬さん。実はいまこの時代でも、アパレルの縫製のほとんどの工程は手仕事です。
パーツをミシンで一つ一つ縫い合わせて行くのですが、パーツの形は本当に多種多様だし違う形状のカーブとカーブを縫い合わせたり、時には片方を引っ張りながら縫ったり、反対に縮めながら縫ったりすることもあって、多様な服が求められる市場では自動化はまだまだ難しい。縫製は紛れもなく手仕事なのです。
そして工場内では、その手仕事の連続によって、一日に何千という商品を作り上げていました。「手」と「つながり」いうキーワードが僕の頭の中に浮かんでた。そして一人では到底成し遂げられないことが、チームワークによって、手と手のつながりによって、創造もつかないくらい遠くまで行くことができる。それこそが会社であることの、仕事の面白さなのだとおもいました。
久留米絣の絣(かすり)とは、織る前に、あらかじめ設計されたピッチで糸を防染してから染め、織り上げた時に柄が出来上がる手法こと。糸を染めてから織り上げる、先染め織物の一種です。絣は従来、手織りで糸一本一本柄を調整しながらゆっくり織ることが多いのですが、久留米絣が特殊なのは、その工程を量産に対応させた産地だということです。この技術は世界中でみてもここだけなのではないでしょうか。
テキスタイルのデザインでまず取り掛かったことは、特殊な久留米絣の技術の特徴を理解することでした。どのようにして柄が形成されていくのか。生地の幅、柄の制約はどのようなもになるのか。事前に技術や機械的な制約を把握しておかないと、あとからつまずいてしまうことが多いので、丁寧にリサーチすることにしています。
久留米絣の物理的な強い制約は、まず幅が38cmくらいになってしまうこと。これは昔の日本の着物に特化した規格ですが、現在でもこの幅をベースに生産体制が組まれています。そしてヨコ絣の場合、柄のピッチ(長さ方向のリピート)を20cm くらいまでにすること。柄の出し方はタテ糸で柄を作るかヨコ糸で柄を作るか、さらに組み合わせるかという選択肢があるが、今回は一番自由度が高く理解しやすいヨコ絣を使うことにしました。ちなみに「20cmくらい」というのは「織り上げたときに柄になるように絞り染めをした一本の長いヨコ糸を杼に巻くことができる最長の長さ」がそれくらいであるため、柄のピッチが制約されるのです。
さて、物語と物作りが見えてきたことで、デザインの材料が揃ってきました。あとは点と点を繋ぐイメージを生み出していくことになります。僕はこのとに頭の中に、レオ・レオニの童話「スイミー」のような、イメージ思い浮かべていました。「小さな魚が集まり、大きな魚になる。」これに似たことは自然の中にもたくさんあります。木の葉が集まり木になり、木が集まり森になる。小さな水の粒が集まり大きな雲になり雨を降らせる。石が積み上げられ、お互いに支え合い何百年も崩れない石垣になる。
そんなイメージを集めていましたが、もう少し論理・理屈を抜け出したい。そこから飛躍することができないかと考えていました。スケッチを重ねて、最終的にたどり着いたのは、手なのか、羽なのか、鳥のような人のようなモチーフ。それらが手(羽)を繋いで空に羽ばたいて行くイメージです。そうして、「手が繋がり羽ばたく」テキスタイルの柄が完成しました。
次回: 大分の縫製工場ユニフォーム vol.3|服とパターンの設計
ダイナンさんのnoteでもプロジェクトについて詳しくご紹介いただいています。
ダイナン公式note