森を展示する部屋
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岡山県美作市の山間に、右手(うて)という集落があります。「森の展示室 UTE」は、この土地の森を舞台にした展示会です。「森に入る」という行為を通じて、人と森の関わりを考える場として続いています。
21人のつくり手が森の中にそれぞれの作品を置きます。2日間だけの展示。来場者は森を歩いて作品をめぐります。
現代の生活では、人が森に立ち入る理由は殆どなくなってしまいました。森は資源に溢れていて、私たちは身近な資源を活用し、循環させて暮らしていました。森に入る意味を問い直すこの展示で、僕は森が持つ資源にアクセスするための、忘れかけている感覚を呼び起こしたいと思いました。
薄手のコットンの布で囲んだ小さな円筒形の空間をつくりました。中に椅子をひとつ置いています。
布の中に入ると、視覚のほとんどが遮られます。向こう側がほのかに透ける程度の軽い布ですが、景色の大半は見えなくなります。すると、普段は奥に控えていた感覚が立ち上がってきます。木の葉のざわめき、川の流れる音、鳥の声。湿った土の匂い。風が布を揺らす触感。どれも最初からそこにあったものです。
歩く行為は、足元に気を遣います。ぬかるみ、倒木、根。意識の多くが地面に向いています。椅子に腰を据えることで、その緊張から解放されます。目を使わず、足元を気にせず、ただそこにいることだけに集中できます。五感の優先順位が変わると、同じ森が別の姿を見せてくれます。
僕は森に入ると、自分の中から、普段は意識していない不思議な感覚が立ち上がって来るような気がしています。それはすっかり飼い慣らされてしまった僕の中の野生なのかもしれません。布を通して「見えないものを見えるようにする」そんなことをいつも考えてデザインをしています。森の展示室では、「みえないことで、みることができる」という逆の発想からアイデアを展開しました。
森の見えていない部分を見えるようにする。つまり「森を展示する」ための装置をつくりました。
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森を展示する部屋
STUDIO MOMEN / 村田裕樹
森の展示室 UTE 2026 / 岡山県美作市右手地区
2026年3月21日・22日
@morinotenjishitsu_ute
