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記憶を布に閉じ込める
Project.

記憶を布に閉じ込める

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西宮の美容室tetenorから、パーテーションの制作の相談を受けました。

店内ではもともと、インドの手紡ぎ手織りの布——カディを一枚、カットルームとシャワールームの間に掛けていた。雰囲気はとても良かったのですが、布が大きすぎてスタッフの動線を妨げていました。現場で色々と相談する中で、小さな布を最小限で配置して、動線を確保しつつ視線を遮るアイデアが生まれました。2つの布はデザインコードを共通にし、空間に要素を増やさないよう、一つのシリーズとして読めるように設計しました。

また、もともと掛けてあったカディを素材として再利用し、新しいパーテーションに生かせないか、という先方から一つの提案もありました。

おそらく80番か100番手の繊細な手織りのカディで、現場で使われていたためそれなりに汚れがついていました。美容室で使うカラー剤やパーマ液が、スタッフさんが日々そこを通るたびに少しずつ染み込んだもの。シミは長年の営業の中で、布に刻まれた記憶と捉え、ポジティブな要素として受け入れました。

その布をビワで染めることにしました。ビワの枝や葉を刻んで煮出す。ある閾値を超えて酸化が始まると、一気に赤みが立ち上がる。ベージュとピンクの間、少しピンク寄りの、静かな色が出る。ちょっと不思議な性質を持った染料です。

全体にほのかにピンク味のある色に染まり、シミを含む全体のトーンが統一され、お店の記憶を蓄えたまま、布の表情だけがあらたまりました。新品の布を使うより、はるかに奥行きのある仕上がりになったと思います。

テテノアは、すでにあるものをできる限り生かすという発想で空間が作られています。お店を改装する際に古材を使ってエントランスの建具や窓を作り、そこに古いステンドグラスをはめ込んだり、シャンプーの量り売りをしたり、排水の処理にも気を配ったり。自然環境への負荷を減らす方法を日々たぐっている美容室でもあります。

ビワ染めのカディのほかに、スタジオモメンで持っていたコットンのオーガンジーや、古い柿渋染めの布を組み合わせました。異なる質感の布を重ね、お店の空間にすでにある色とリンクさせながらバランスをとりました。

「まるで元々ここにあったみたいですね」と、設置後にスタッフさんとの雑談。店が歩んできた歴史や、記憶、文脈を布に閉じ込めながらも空間に新鮮さをもたらすことができました。